東野圭吾「秘密」

最近、週一冊ペースで東野圭吾を読んでいくブログになってます。


秘密 (文春文庫)

秘密 (文春文庫)


評価しちゃうと、『微妙』って感じ。
以下微妙にネタバレ。






最初、イマイチだなぁって思いました。
何がイマイチって、登場人物が『隙だらけ』だったからです。
平介も直子も、直子の意識が藻奈美に移ったというのに、なんか楽観的というか、そのことに今一つ真剣に考えてなくて。
この、無碍に生み出される隙が、この人達に負わなくてもいい傷を負わせるんじゃないかと、嫌な気分になっていたのです。
なんだよコイツら、もっと真剣に現状を考えてさ、受け入れてさ、対策ねろよ、とか思ったのですが。


のちに出てくる、他のバス事故の被害者とか、根岸さんとかの登場人物も、みんな無駄に隙がある。


そこで気付きました。
あれま。


『秘密』ってそういうことだったのか。


娘が死んだだの、嫁が死んで娘に乗り移っただのという、認めたくないというか直視したくない事実を(自分の心に対して)『秘密』にしてしまうコイツら。現状を作ってる、重大な要素を敢えて見ないようにしているからこそ、隙だらけだったんですねぇ。
そんでお話しは、平介と直子が直視したくないモノを秘密にして、それで軋轢が生まれまくって、その度に秘密を少しづつ解いていって……。


なんというか。現実はいつかは直視しなくちゃいけないし、つーか現実なんだから、それを見ないようにと『秘密』にしていたところでいつかは崩れ落ちるものであって……。でもまあ、たとえばラストの「泣かない」と思っていた自分が、アレに対する自分の心の中、つまり『秘密』に直面して泣いちゃうシーンのように、自分の心から見られないように『秘密』にしちゃうような物事って、その人にとってとっても大事な物なんでしょう。



しっかし、この人の文章ってやっぱいいねぇ。無駄に細かい表現をしないのに、大事な軸はきっちり抑えられている。シンプルイズベスト。