自戒も込めて。


書くまでもない、って、書きたくなる気持ちはわかる。
こんなこと、自分の中では自明だって、他人の中でも自明だって。
そんなことを、大仰に口に出すのは、かえって恥ずかしいことだって。
でも、そんな、「書くまでもない」ことが、読んだ人の心に届いてしまうときもある。
その人にとっては自明でも。その人の中の他人にとっては自明でも。読んだ人には、自明じゃなかったんだ。


だから。「書くまでもない」なんて言わないで。
それは、貴方の意図した意味ではないかもしれないけれども。
その言葉が僕に届き、僕の心を揺らしたことは、変わりようのない事実なんだから。
だから。その瞬間を否定するような、そんな言葉は、言わないでほしい。


……というのを、逆の立場になってはじめて分かった。
僕も「書くまでもない」とか、平気で書いてたし。もう気をつけよう。僕の言葉の射程は、やっぱり僕自身が一番近いのだけれど、表明した以上、その言葉は『何処かの誰か』に届いてしまうのかもしれないのだから。いや、何処かの誰かには、届いてしまうのだから。

自分で拙いと思う考えも。穴があると思える思考も。イマイチ面白くないネタも。くだらない、感傷にしか思えないことも。
『届いてしまった』他人の先では、心を揺さぶる何かになるのかもしれない。そしてそこにこそ、僕と貴方の違いが表れていて、貴方が貴方であり、僕が僕であるということを、何よりも明確に表しているんだと思う。
だから、本当、そこを『簡単に』切り捨ててしまうのはやめよう、気をつけよう、と思った。
言葉の射程は、とてもとても、自分では計り知れないものなんだ。