秒速5センチメートル


秒速5cm、そりゃ桜の落ちるスピードかい、ちょっ!


かなりどうでもいい話だった。


第一章は彼の世界をお見せする話。
大雪や、いちいち遅れる電車や、細かい想定外みたいな、僕にはどうでもいいけど彼にとってはどうでも良くないことを事細かに描写する癖に、彼が一体全体どういう人間なのかが大体分かったけど、彼の世界を知るほどまでは分からなかった。説明っぽい台詞や。乖離するモノローグや。分断される感情で。彼の心までは僕には届かなかった。たぶんアレ、秒速で言うと5センチメートルくらいの、しょうもない速度だろう。


第二章は彼の彼女ではない彼女をお見せする話。
第一章と(大まかにいっても細かくいっても)同じなので割愛。


第三章は、世界と世界、この距離を埋めるためにはどのくらいの速度が必要だったのか、この速度だったらどの程度の距離まで埋められたのか、というお話し。秒速5センチかどうかは知らないけど、要するに、埋められないし間に合わないし届かないし、じゃあこれは、そういうものなだけだったということかな、というお話し。
彼の世界は彼女の世界に届かないし、彼女の世界は彼の世界に届かない。
だから。
彼らの世界は、僕の世界に届かない、届いてはいけない。
つまりは、どうでもいい話、だった。