ひぐらし絆は其処に横たわる溝淵を跳躍でき(以下略

2週間ほど前、朝日新聞のテレビ欄にDSひぐらし絆の広告が載ってた!という事態がありましたが(参考:http://hi56.blog90.fc2.com/blog-entry-392.html)、先週の金曜日もまた載ってましたね。テレビ欄に。発売日が今週だということを考えると、またぞろ今週末に広告が載ったりするのでしょうか。



上が第二巻のCMで、下が第一巻のCM。
新聞の広告欄にて大々的にアプローチ、CMでは若い女性がゲームをプレイしているというシチュエーション、この二つからも分かるように、「ひぐらし絆」は普通にギャルゲー層・オタク層だけを狙っているのではなく、一般人層も視野に入れています。オタク狙いだけでしたら、こんなCMにする必要はありませんしね。「バス編」だけでなく、「ゲーム画面使用編」のCMも、オタク受けしそうなギャルゲー・アニメ色を出来る限り抑え、ミステリィ・サスペンスホラーに見せようといったアプローチが伺えます。一般人でも、アンテナ高い人には、実写映画や若者の殺傷事件などで「ひぐらし」の名前は聞いたことあって、何かしら危険なモノ・おどろおどろしいモノ、という認識があるかもしれませんから、それを逆手にとってミステリィ・サスペンスホラー色を強調するのは効果的かもしれません。
一方ギャルゲー層・オタク層、またひぐらしファン層には、主にウェブ・雑誌・あるいは店頭(主にオタク向けゲームショップの)などでの展開に偏重しています。公式サイトの様々な企画や限定版・店舗限定特典などがそうですね。これはまあ当たり前といえば当たり前で、ひぐらしの認知率とネット普及率・オタクの雑誌購買率などを考えたら、わざわざ大金払ってテレビ・新聞でひぐらしはオタク向けですよとアピールしても効果が薄いからでしょう。

ひぐらし絆が一般層にもアピール――ひぐらし絆の狙い的には、アニメ絵のミステリィ・サスペンスといった趣きを醸し出し、DSで読むノベル(「文学全集」「西村京太郎」など)購買層にも、ある程度コミットしようという考えかもしれません――しているのは、そもそも「ひぐらし」が、追加要素があるとはいえ、PC版・PS2版ときての3度目ということで、オタク層のパイをかなり消費してしまっている感からかもしれません。

第一巻は、初週42702本、二週目11594本、総計で6万本以上は売れたと思われます(PS2「祭」は約11万本、「カケラ遊び」は約6万〜7万本)。
この数字にどれだけ非ギャルゲー層・オタク層が、つまり一般人層が介在したのかは定かではありませんが(憶測で言うと、第二巻の広告展開では、第一巻時よりさらに一般人層へのアプローチを強めている(方向転換ではなくより強化されている)ことから、アルケミストとしてはそれなりの手ごたえを感じているのかもしれません)、是非とも「ひぐらし絆」には、オタク向けゲームと一般人向けゲームとの間の溝淵を跳躍してもらいたいものです。


余談。
今回のお話と直接的には関わりませんが、最近のギャルゲー、特にDS向けなんかは、もうギャルゲーなんだか普通のゲームなんだか分からない感じのものが増えてきているように思えます。あるいは逆、普通のゲームに、ギャルゲー的なギミック・キャラクターとの類同性が増してしまった。具体的には「タクティクスレイヤー」とか「ラストバレット」とか。「アナザータイム アナザーリーフ」とか「いかもの探偵」とかも、その辺に入れるでしょうか。
勿論「リアリアDS(「Really? Really!」DS版)」みたいな思いっきりギャルゲーもありますが、移植物はともかく、オリジナル作品はその境界が不明瞭になってきている例がある。これは、今まで”普通のゲームがギャルゲーっぽい要素(恋愛)を取り入れる”(例えば「サモンナイト」や「ルーンファクトリー」など)というのはありましたが、それプラスして、”ギャルゲーっぽいものが普通のゲームっぽくなる”という方向性も加わって、その二つの相克から織り成された構図かなと思っています。
これは、ある意味理由は明らかで、コンシューマオリジナルギャルゲーは売れないからなんですよね。今年9月までで、初週一万本を越えたコンシューマオリジナルギャルゲーは、「アイマスL4U」「キミキス廉価版」「12RIVEN」「魔女神判2」「メモオフ6」「フェイト/タイガーころしあむ アッパー」のみ。全て続編・廉価版ですね。この数字からもある意味明らかなように、オリジナルの、特に続編ではなく一作目なんかは、ギャルゲー層にアピールするだけではなく、他の層にもアピールしなければまず生き残れないでしょう。
逆に。去年・一昨年あたりと比べてかなり増えてきたのが、アニメ・漫画原作で、ゲームにギャルゲー的要素(恋愛アドベンチャーゲームっぽい感覚)が混じっている作品。PS2らき☆すた」なんかは、もうモロにそうでしたが、他にも「ToLoveる」「乃木坂春香」「ロザリオとバンパイア」など。軽いものならば「狼と香辛料」や「コードギアス LOST COLRS」、ちょっと毛色が違う所なら「一騎当千」とかでしょうか。「乃木坂」は約9000本、ロザバンは約7500本、他は全て初週1万本越えています。そもそも、その原作自体がギャルゲーと親和性の高い恋愛を扱うもの(らき☆すたは違うけど)だったりするのですが、だからこそ、わざわざオリジナルでイチから企画してギャルゲーを作るより、原作という既存のキャラクター・物語・モチーフにギャルゲー的要素を混入させた方が、遥かに市場への受けは良いのでしょう。


そんな感じで、コンシューマギャルゲーがこの先生きのこるためには、一般層・非ギャルゲー層の獲得の為の、ゲーム内容あるいは広告展開のそれへの迎合、または非ギャルゲー層で漫画・アニメ好きな層へのアプローチとしての原作物(これは本質的にはギャルゲーではなく、原作キャラとの架空の恋愛が楽しめるという二次展開)なんかが、現状徐々に起こっているシフト転換であり、これからも強めていくのかもしれないしそうでもないかもしんないなーとか思います。おしまい。